01この記事の範囲
「合同会社と株式会社、どちらで起業すべきか」という質問をよくいただきます。ただ、その答えは、事業の中身、取引先や融資・出資の考え方、将来の計画などによって変わります。
そこでこの記事では、判断の材料のうち「手続き面の違い」に絞ってお伝えします。税金・社会保険・出資者との関係などの細かい比較は、それぞれ税理士・社会保険労務士・司法書士の業務領域ですので、ここでは扱いません。
02設立の流れの違い
法務省の案内によると、設立の大きな流れは次のとおりです。
| 段階 | 株式会社(発起設立) | 合同会社 |
|---|---|---|
| 1 | 定款を作る | 定款を作る |
| 2 | 公証人の認証を受ける | 認証は不要 |
| 3 | 出資のお金を払い込む | 出資を履行する(払い込む) |
| 4 | 役員などを決め、設立登記を申請 | 設立登記を申請 |
| 5 | 登記が完了すると会社が成立 | 登記が完了すると会社が成立 |
法務省の合同会社の案内には「合同会社の定款については、公証人の認証を受ける必要はありません」と書かれています。この「認証がない」ことが、設立の手間と費用に表れる最大の違いです。
株式会社の定款の認証は、本店所在地を管轄する法務局に所属する公証人が行います。事前に公証役場への連絡が必要です。
03設立時にかかる公的な費用
登録免許税(設立登記)
| 株式会社 | 合同会社 | |
|---|---|---|
| 計算方法 | 資本金の額 × 0.7% | 資本金の額 × 0.7% |
| 最低額 | 15万円 | 6万円 |
資本金が少ない場合は、ほとんどが最低額になります。
定款認証の手数料(株式会社のみ)
日本公証人連合会の案内では、2024年12月1日に定款認証の手数料が改定され、現在は次のとおりです。
| 資本金の額 | 認証手数料 |
|---|---|
| 100万円未満 | 3万円(一定の条件を満たすと1万5,000円) |
| 100万円以上300万円未満 | 4万円 |
| 300万円以上 | 5万円 |
1万5,000円になる条件は、発起人がすべて自然人で3人以下であること、発起人が全株を引き受けると定款に記載があること、取締役会を置く記載がないこと、などです。条件の細かな読み方は、事前に公証役場で確認してください。
このほか、定款の謄本の手数料が1枚につき250円かかります。紙の定款には収入印紙4万円が必要ですが、電子定款ではかかりません。
費用の目安
公的な費用だけを見ると、合同会社は株式会社より少なく済みます。ただし、これは「登録免許税と定款認証」の差であり、専門家への報酬や印鑑の作成費などは別に考える必要があります。
04設立後に続く手続きの違い
役員の任期
- 株式会社:取締役の任期は、原則として選任後2年以内に終わる事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までです。定款で短くできます。公開会社でない株式会社は、定款で最長10年まで延ばせます(会社法第332条)。
- 合同会社:業務を行う社員に、株式会社のような任期の定めはありません。
任期が来たら、役員が同じ人でも「重任」の登記が必要です。法務省も「役員の変更の登記を忘れていませんか?再任の方も必要です」と案内しています。登記の手続きそのものは司法書士の業務です。
決算公告
- 株式会社:決算の公告が義務づけられています(会社法第440条)。官報、日刊新聞紙、電子公告のいずれかで行います。
- 合同会社:株式会社のような決算公告の義務はありません。
小さな会社でも、株式会社であれば決算公告の手間がかかることは、知っておいて損はありません。
そのほか
株式会社は、会社の機関(株主総会、取締役など)のルールが法律で細かく決められています。合同会社は定款で自由に決められる部分が広い一方、定款の作り込みが大切になります。
05手続き面の違いのまとめ表
| 項目 | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 定款の認証 | 必要(公証人) | 不要 |
| 設立登記の登録免許税(最低額) | 15万円 | 6万円 |
| 定款認証の手数料 | 3万~5万円(条件により1万5,000円) | かからない |
| 役員の任期 | あり(原則2年、最長10年まで定款で延長可) | なし |
| 決算公告 | 義務あり | 義務なし |
| 設立の手順 | 認証の段階がある分、工程が多い | 比較的少ない |
06この記事で扱わないこと
次の点は、手続き面を超えて、事業の考え方や専門家の領域に関わります。
- 税金(法人税・消費税など)の違い:税理士の業務です
- 社会保険の加入や手続き:社会保険労務士の業務です
- 設立登記の申請そのもの:司法書士の業務です
- 融資や取引先からの見られ方:事業の内容や相手によって異なります
ふくはら行政書士事務所は、定款の作成や、設立に必要な書類のお手伝いをします。代表自身も合同会社を設立しています。そのうえで「自分の場合はどちらにするか」を一緒に考えるお手伝いもできます。
07まとめ
- 手続き面では、株式会社は定款認証が必要で、登録免許税の最低額も高くなります。合同会社は認証が不要で、設立の負担は比較的軽くなります。
- 設立後は、株式会社には役員の任期と決算公告がありますが、合同会社にはありません。
- ただし、どちらを選ぶかは、手続き面だけでは決まりません。事業の計画に照らして考えることが大切です。
会社の形で迷っている、許認可を取る予定があるので会社の作り方から相談したい、という段階でも大丈夫です。お気軽にご連絡ください。
代表自身も合同会社を設立しました。手続きの違いだけでなく、設立したあとの運営の手間まで含めて、一緒に考えます。
参考(確認日2026-10-01)
- 法務省「合同会社の設立手続について」
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00141.html - 法務省「株式会社の設立手続(発起設立)について」
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00134.html - 日本公証人連合会「会社の定款手数料の改定」
https://www.koshonin.gr.jp/chg_teikanfee - 日本公証人連合会「定款の認証に要する費用、株式会社設立の費用等はいくらですか。」
https://www.koshonin.gr.jp/notary/ow09_4/9_4_q03 - 法務省「役員の変更の登記を忘れていませんか? 再任の方も必要です」
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00091.html - 法務省「電子公告制度について」
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji81.html - e-Gov法令検索「会社法」
https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086